魂を知る占いTOP ジャンからのメッセージINDEX |
|
昨夜私は友人と、ニューヨークシティのセントラル・パークで上演された無料のお芝居を見に行きました。出し物は「ヘンリー五世」。私たちは6人グループだったので、全員が一緒に座ることができず、私はマギーと二人、並んで座ることになりました。 芝居が始まるとすぐに気づいたのは、シェイクスピアの作品とは思えないほどユニークな演出。その創造力は、信じられないほどでした。あるシーンでは、中央舞台で進行するストーリーとは別に、袖でもう一つのカップルが芝居をしていたのですが、その台詞はシェイクスピアが書いた当時そのままの古い英語。 ところが役者はニューヨークのクイーンズ訛りで話しているのです! 品のない下層階級の役どころを、やはり品のないニューヨーク訛りで話している様子を見て、観客は芝居に妙に親近感を感じ、話に引き込まれていきました。 また別のシーンでは、クライマックスの戦いを前にしてフランス貴族がタオル地の心地よいバスローブに身を包み、太陽の下でのんきに日焼けをしながらいつ起こるか知れない戦争について策を練るのです。「こんな心構えではとても戦いに勝利できないな」と暗示させる、実に巧みな演出だと私は思いました。 実際このお芝居の上では、アジンコートの戦いの結果、フランス軍は8434人の兵士を失い、対するイギリス軍はわずか25人の死者を出しただけでした。それにしてもヘンリー5世を演じたリーブ・シュライバ―の鬼気迫る演技は素晴らしく、私がこれまで見たシェイクスピア劇の俳優の中で一番すごいと思えるものでした。 休憩時間になり、分かれて座っていた友人と再会したとき、マギーと私は当然ながらお芝居に対する感動と驚きを分かち合おうと興奮気味でした。けれども友人たちはなぜか静かで、しらけた様子でした。 一人は、先週のニューヨークタイムスの日曜版にこのお芝居が酷評されていたと言いました。もう一人は、それまでに見た「ヘンリー5世」の芝居と比べて、今夜のお芝居がどれほど「欠けているか」について指摘しました。三人目の友人は、今夜の芝居は最後まで見ないかもしれないと言いました。 こうして、シェイクスピア劇については私よりもずっと専門的な知識や経験をもつ人々に、多数決で"駄作"との烙印を押されてしまいましたが、マギーと私はどうにかこの芝居に対する興味を失わずに席に戻りました。 芝居が終わって、私たちはまた集まりました。そしてさっきは否定的だった友人たちが突然「後半は前半よりもずっと楽しめた」と言ったのです。途中で帰った人は誰もいませんでした。 そのとき私はこう思いました。心に感じたことや、純粋に楽しいと思ったことを偽らず、取り繕うことなく口にすると、それを聞いた人々がもっと楽しい経験をするように仕向けることができるものなのだと。評論家の評価はどうあれ、少なくとも私たちは自分の感性を信じ、楽しいひと時を過すことができました。
|
Copyright Telsys Network CO.,LTD. このページの無断転用・転記を禁じます。 |