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No.5 西洋占星術師の使命。運命は変えられる？
●西洋占星術師の使命
さて、「自分に課せられた、運命は変えられない」というのが、真実か否かについてはのちほど、お話しすることにして、ここでは西洋占星術師の役割について触れてみたいと思います。占星術師はクライアントに課せられた運命を話し、相手が喜んだり悲しんだりする様子を、単に見ているだけの存在ではありません。占いとは予言そのものに目的があるのではなく、「与えられた運命をどんな意識で受け入れ、いかに行動すれば良いのか？」、また、「心地良く生きるためには、物事をどんなふうに考えれば良いのか？」という現実に対する意識やとらえ方、行動パターンなどについて、詳細にアドバイスをするという目的があるからです。
恋愛問題で悩んでいる学生には、その相手の異性の性格や気持ちを分析し、「どんな方法で相手にアプローチすれば、好かれるのか？」についてアドバイスをします。はたしてその人に、そういう恋愛テクニックを駆使する力があるかどうかは別として、どうすればその相手の好みにそえるのかについて、細かくアドバイスして、恋がうまくいくための精神と行動面での指針を与えるのです。
西洋占星術では人生を少しでも楽しく有意義に生きるための知恵を、人々に教えることによって、西洋人の生活に根づいてきました。真実を予言することそのものには、それほど大きな価値はおいていません。
もし、65歳で死ぬとしても、そのことは、クライアントが真実を知ることを強く望まない限り伝えません。それよりも、65歳までにやるべきことをやり、行きたい場所に旅行に行き、欲しかった物を買うことをすすめるのです。そして「65歳以降は、いろいろな事情が発生して、そういったチャンスがなくなってしまいます。ですから、65歳までにやりたいことをひとつでも多く経験してください」とだけ伝えます。
どんな人でも、いつの日か病気や死に見舞われます。しかしそんな人間に対して「人生を少しでも幸せに生き抜くために必要な、考え方や行動の指針」を与えることが、西洋占星術師の使命だと考えます。
ここで、同じ内容の恋愛相談が投げかけられた場合の、インド占星術師の回答についてお話ししておきますね。
「あなたは32歳のときに5歳年上の異性と結婚します。ですから、今の異性との結婚について悩む必要はありません。この人とは結婚しないからです」と答えるのがインド占星術師です。
インド占星術には真実を伝えることそのものに意味があるように思います。たとえ過酷な結果であっても、その人の魂の過去世の行いや真実を伝えて、その問題の原因となっているあやまちをきちんと教えて、認められるように手助けをします。
そして、二度とそのようなことが起こらないように、今日から改心すること。宗教的な指針である菜食、礼拝、プージャを行うなどの具体的な日々の行為について教えるのです。西洋占星術と違って、インド占星術は単に精神的な指針や心がけだけでは、運命は変わらないと考えています。神の恩恵なしには、運命は変わらないという考えなのです。それが宗教と一体化した占星術の強みでしょうね！
●運命は変えられるのでしょうか？
さて、それでは「運命」についての見解についてお話ししましょう。私たちは最近、カルマという言葉を普通に使うようになりました。仏教用語ではカルマ＝行為、という意味をもっています。
前世の行いによって、現世の出生や人生が決まるということについては、すでにご説明しましたが、それでは、来世の出生や人生はどうやって決まるのでしょうか。
それは、過去世プラス現世の行いによって決まります。つまり、過去世＋現在＝来世となり、過去世の行いだけでなく、今を生きている私たちの日常の行動や心のあり方で決まるということなのです。
現世の出生や運命は過去世の行動によって決まると言われていますが、もしも、すべてが過去世の行いの結果だとしたら、人間の進化も向上もあり得ないことになり、過去世の因果関係がエンドレスで続くことになります。しかし、もしもこれが真実だとしたら、魂の向上はありえません。
魂とは、もともと進化を義務づけられており、進化を果たすという目的をもって新しい肉体に宿るのです。ですから、向上しない魂は永遠に存在し続けることができません。ということは、過去世の行いによって起こる出来事以外にも、現世＝現在をどう生きるかによって、未来を変える可能性をもっているという考え方が自然です。「現世＝現在の生き方によっては、くり返し過去世から引き継がれた悪循環を変えることができる」というのが現在の私の見解です。
しかも、魂はその進化への挑戦にふさわしい時期が来たときに、再びこの世に生まれます。そして、あの忌まわしい過去世の試練に再挑戦させられるのです。その試練をクリアするまでは、決してその次のステップには進めません。何度でもくり返しくり返し生まれ変わり、生まれ変わるたびに、同じレッスンの同じ場面が再現されるのです。それはまるで車の運転免許の実地試験のようです。しかし、何度もくり返し失敗しているうちに、さすがの私たちも問題点や不幸のパターンに気づきます。
私たちが成長したり進化したりするためには、自分に起きた出来事の因果関係をきちんと理解して深く反省し、癖になっている自分の生き方や考え方を変える必要があります。そうすることで、早いペースで魂を進化させたり、向上することが可能になるのです。
ですから、自分を振り返り、悪い行いついて反省しない人は成長できません。
魂にとっては、前世、現世、来世は一本の糸でつながっています。努力の結果はどの地点でも出てくる可能性は十分にあり、20代のころの努力が40代で出てくることだってあります。現世で起こるすべての出来事が、100パーセント前世の行いだけで決まるわけではなく、「現世の努力も関係している」というのが真実ではないでしょうか？ そんなわけで、西洋人は決してあきらめず、物事を前向きに考えて、現在を上手に生きようとして、さまざまなテクニックを駆使して生きています。そのためのアドバイザーが西洋占星術師なのです。
最近は西洋でも輪廻（りんね）思想が広く受け入れられるようになり、西洋占星術においても、前世を取り入れた見方をする占星術師が多くなりました。たとえば、子供のころには「神童」と言われた人が大人になると普通の人になっていたり、逆に「醜いアヒルの子」と言われた女性が大スターになったり、大成功する姿を私たちはたくさん見てきているからです。
とくにカースト制度などの明確な階級制度のない資本主義社会では、大きな上昇が可能です。運命はもちろん存在しますが、変えることも可能というのが正解のようですね。
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