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多神教であり、神々と交流することを日常的行為としてとらえていたケルト。ドルイド僧はそれぞれの神々にふさわしい時期を選び、聖なる祭儀を行っていました。守護神はあなたの月の守り神として、「迷ったり、悩んだりしたときに光を照らしてくれる」存在であり、繁栄と幸福をあなたにもたらしてくれるでしょう。
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●1月の樹 ルー
医神ディアン・ケヒトの息子キャンと、邪眼の魔王バロールの娘エスリンとの間に生まれた、光神。知識、医術、魔術、発明に優れ、ダーナ神族の四つの神宝のひとつ「魔の槍(ブリューナク)」を所有しています。戦いにおいて、槍や剣を目にも止まらぬ速さで扱うので「長腕のルー」と呼ばれていました。戦いに強い美男子ルーは、ケルトの英雄の原型と言われています。
魔王バロールは「娘の産んだ子どもに殺されるだろう」と、ドルイドに予言され、幼い娘エスリンを塔に閉じ込めてしまいました。しかし、キャンが塔にいるエスリンを偶然見かけ、その美しさに心打たれ、彼女を助け出します。そして、ルーが生まれるのです。ルーは成長し、重税を課していた非道なるバロールを倒し、王位に就いたのでした。
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●2月の樹 ブリジット
全知全能の神ダグダの娘。火鉢、または大きな魔法のカップを手にもっています。炎をつかさどる女神であり、学問、治癒、魔法、予言をもたらす詩の神でもありました。ブリジッド(輝くものという意味)は長く民衆に愛され、大きな崇拝を集めており、キリスト教が入ったあとも消えることなく、聖人として信仰されました。
ケルト四大祭祀のひとつであるインボルグ(2月1日)のお祭りは、ブリジットにささげられたものです。インボルグは羊の授乳の始まりとされており、春の到来を告げるお祭りでした。火の女神ブリジットは、収穫、家畜、自然の豊穣(ほうじょう)をもたらしてくれる守備範囲の広い神で、人々から親しまれていたのです。しかし、その一方で暴君ブレスの妃(きさき)でもあったブリジットは、やさしい顔と恐ろしい顔の両方をもつ、複雑な女神といえるでしょう。
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●3月の樹 マナナン・マクリル
海の彼方にある「常若の国(ティル・ナ・ノグ)」の王。ティル・ナ・ノグは光り輝く国で、病も苦しみも、老いも死もない国。おいしい物がたっぷりあって、彩り豊かなその島は、人間たちが永遠に夢みる妖精の国として知られています。
マナナン・マクリルは海の神リルの息子で、アイルランドとイギリスの間の海に位置するマン島の守護神。瞬く間に目的地へと移動できる「魔法の船」、海でも陸でも走ることのできる「魔法の馬」、どんな鎧(よろい)でもかなわない「魔剣」などをもっていました。色鮮やかなマントをひるがえし、馬に乗って海をかけるマナナン・マクリルは、水夫、漁師の守り神としても有名です。
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●4月の樹 ブラン
ブランはイギリスのウェールズにおいて活躍する神で、古代ブリテンの守護神でもあります。その名前はケルト語で「大きな鳥」を意味し、鳥は英雄ブランの象徴となりました。ブランはとても巨大な神で、大河をまたげるほどの巨大さと言われています。
ウェールズの民話集「マギノビオン」には、ブランがいかに生き、いかに死んだかが語られています。彼はアイルランドの戦いで大活躍しましたが、戦いの途中、毒を塗った槍によって傷つけられ、瀕死(ひんし)の重傷を負ってしまいました。もはや、死を免れないと悟ったブランは、仲間たちに「私の首をロンドンへもって帰りなさい」と頼み、首をはね落とさせます。しかし、その首は腐敗せず、生きているかのように歌をうたったり、命令したり、しゃべり続けたと言われています。そして、首を切られてから80年後、ようやく埋葬されてからはブリテンの土地を守る守護神となりました。
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●5月の樹 セリドウェン
暗黒の予言パワーをもつと言われているウェールズの月の女神。セリドウェンは地下のアザーワールド(異界)にあるという「魔法の鍋」を守っています。それは、インスピレーションと知恵をもたらしてくれる食べ物を作りだす不思議な鍋なのです。
セリドウェンにはふたりの子どもがいました。美しい少女と、醜い男の子で、男の子は世界一醜いと言われていました。セリドウェンはその男の子を世界でいちばん、すばらしい男性にするために、1年と1日をかけてハーブを煮続けました。最後の日、三滴の液体が、男の子の指にはね落ちます。彼が指をなめると、三つのギフトが彼に与えられました。詩的なインスピレーション、予言、そして、人や動物などいろいろなものに変身できる力でした。
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●6月の樹 オルウェン
白サンザシの女神として知られるオルウェン。金髪で、エメラルドをちりばめた襟飾りをつけ、炎色の服を着ています。そして、瞳は鷹の目のようにキラキラ輝いているのです。彼女が歩くと、花が咲くという植物の女神。
オルウェンは誰にも姿を見られないようにひっそりと暮らしているのですが、毎週土曜日になると、髪を洗うために羊飼いの家を訪れます。そのとき、指輪などの装飾品をはずし、その場に置きっぱなしにして、二度と取りに来ないと言われているのですが、これは大地に種をまいていることを表しています。アーサー王のいとこで、高貴な生まれの戦士クルフッフは、オルウェンに求婚しますが、オルウェンの父、ケルトの守護神イスバザデンによって難題を与えられます。ですが、アーサー王たちの協力もあって、見事その難題を解き、オルウェンと結婚することができたのでした。
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●7月の樹 ダグダ
丘の地下にあるという楽園の王であり、全知全能の神。愛と美と若さの神オィンガス、妖精の丘をもつ、地下の神ミディール、霊感、弁論、言語の神オグマ(ケルト人が用いた古代のアルファベット、オガム文字の発明者)、戦いの神であり、常若の国(ティル・ナ・ノグ)の最初の王ボォブ、火の女神ブリジットら四人の神々の父と言われています。ケルトの神々は足首までの長いマントを着ていることが多いのですが、ダグダは木こりが着るような膝(ひざ)までの短い服を着て、漁師のような長靴を履いていました。また、おかゆが大好きで、巨大な体でおなかを突き出した姿はどこかユーモラスな印象を与えます。
ダグダはダーナ神族の四つの神宝のひとつ「魔法の大釜」をもっています。これは、食べる者の「徳」に応じて、いくらでも食べ物が出てくる釜で、ダグダが豊穣(ほうじょう)の神と言われる所以(ゆえん)でもあります。
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●8月の樹 ダヌ
ケルト神話の中心となるのがトゥアハ・デ・ダナーン(ダーナ神族)。彼らは魔の雲に乗って、エリン島(アイルランド)へやってきました。彼らは金髪の碧眼(へきがん)で、とても美しく、音楽の才能に秀でており、四つの魔法の道具「魔剣」「魔の釜」「魔の槍」「運命の石」を島にもたらしたと言われています。
そのダーナ神族の母であり、主神として君臨していたのがダヌ。母神を信仰するケルトは母系社会であり、女性はあがめられる存在だったのです。ダヌ神族はフォモール族を倒したあと、200年間アイルランドを支配しました。その後、エリン島にやってきたマイリージャ族との戦いに敗れ、人間の目には見えない精霊となって、島や丘に住み、永遠を生きているのです。
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●9月の樹 フィン
戦いの神ヌァザの子孫で、ケルトの英雄フィンと呼ばれています。父親はフィアナ騎士団の団長クール、母親が戦いの神ヌァザの孫娘マーナで、フィン・マックールとは「クールの息子フィン」という意味です。父親クールは、彼が生まれる前に、ライバルであるゴールによって殺されてしまいました。そのため、フィンは森の中に隠れて暮らさなければなりませんでした。しかし、ただ隠れていたのではありません。ふたりの知恵ある女性によって英才教育をほどこされ、立派に成長して、フィアナ騎士団の頭領になりました。
フィアナ騎士団は平時において、おもに狩猟をし、戦争時には外敵を防いだり、王の側に立って参戦した職業軍人団でした。フィンは親指をしゃぶることで(知恵の鮭の魔法によって)予言の力を発揮し、父の敵であるゴールに復讐(ふくしゅう)を果たしたと言われています。
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●10月の樹 エーディン
ケルト神話に登場する光の女神。この世でいちばん美しい女神とされ、月のパワーをつかさどると言われています。コノート王アイルの娘で、地下の神ミディールのふたり目の妻。愛と美と若さの神オィンガスの誘惑を受けたエーディンですが、その後、ミディールの熱烈なプロポーズによって花嫁となり、地下王宮へとやってきます。しかし、最初の妻フォームナッハの激しい嫉妬(しっと)を受け、彼女の魔法の杖(つえ)で蝶に姿を変えられてしまいました。エーディンは紫色の美しい蝶となって、約1000年の間飛び続けることになります。
アルスターの英雄エタールの王宮にたどり着いた蝶のエーディンですが、あやまって酒の杯の中に落ちてしまいました。逃げようとした瞬間、彼の妻が酒と一緒に蝶を飲み干してしまいます。しかし、蝶のエーディンはその妻の子宮までたどり着き、エタールの娘として生まれ変わることができたのでした。美しい娘に成長したエーディンは、アイルランドのエホオズ王と結婚し、幸せに暮らしたということです。
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●11月の樹 アリアンロッド
ウェールズの女神で、ケルトの主神ダヌの娘。ウェールズ人が崇拝した北かんむり座の守護神でもあります。アリアンロッドという名前は、「白銀の車輪」という意味で、「時」のシンボルとして、白銀の車輪を果てしなく回し続け、出産を取りしきるとも言われています。また、月の女神でもあるアリアンロッドの車輪は、戦死者の魂を月の世界へと運ぶ大きな船に例えられています。
ウェールズの王であるマスは、アリアンロッドのことをとても気に入り、妻にしようとしましたが、アリアンロッドとグイディオン(彼女の兄)との仲を疑い、彼女の潔白を証明するために魔法の杖(つえ)にまたがせます。処女だったアリアンロッドですが、グイディオンは何を思ったのか杖に魔法をかけ、彼女にふたりの子どもを産ませます。ふたりの子どものうち、ひとりめの息子は亡くなってしまいますが、ふたりめの息子はグイディオンが引き取りました。しかし、アリアンロッドはそれが気に入らず、その子どもに呪いをかけてしまいますが、グイディオンの知恵により、その呪いは破られました。
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●12月の樹 プゥイール
ウェールズの英雄。名前は「知恵」を意味しています。アンヌン(地下にあるという妖精の国)の王であるアラウンを助け、アラウンの宿敵ハフガンを倒したプゥイールは、アンヌンの長と呼ばれ、アラウンとプゥイールは親友となりました。その後、プゥイールはウェールズの女神リヒアンノンと出会います。
リヒアンノンは白い馬に乗って、プゥイールの前を駆け抜けて、彼の気を引きました。プゥイールも彼女をひと目見て恋に落ちました。ふたりは愛し合い、リヒアンノンは父親が決めた相手をふって、プゥイールを選んだのです。その後ふたりは結婚し、幸せに暮らしました。また、プゥイールは、すばらしい狩猟能力をもった猟犬たちを飼っていたと言われています。
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●13月の樹 プリュデリ
プゥイールとリヒアンノンの子ども。仲の良い両親のもとで暮らしていたプリュデリですが、あるとき何者かに誘拐されてしまいました。プリュデリを見ていた世話係の女性たちは、自分たちが責められるのを恐れ、母親であるリヒアンノンがプリュデリを殺したのだとウソをつきます。そのため、リヒアンノンは子どもを誘拐された悲しみと、まわりから責められることで二重の苦しみを味わうことになったのでした。
母親が受けた受難からプリュデリ=「悩み」という意味の名前がつけられたのです。彼は誘拐されたのち、グウェント・イスコウドの王テイルノンに発見され、その子どもとして育てられていましたが、テイルノンが本当の親の存在を知り、しばらくして、プリュデリは親のもとに帰されたのでした。
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